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Archive for 3月 6th, 2023

自費出版あれこれ(その1)

06 3月

自費出版の苦しみ
 現役時代、高校生(女子)が1年間の海外留学を終えて帰ってきた。私は、早速,彼女にあれこれアメリカの学校生活について聞いた。彼女は、自分の経験したことは、よく知っていた。

 しかし、高校生活全般、部活動、サークル活動、行事、教育行政などについては分からないことも多かった。それは当然のことであろう。日本の高校生に、2年生になったとき、これらの全てを聞いたところでどれだけ答えられるだろうか。ほとんど答えられないだろう。

私が編集長で彼女は記者のようなもの
 そこで、彼女に、「春休みに、もう一度アメリカへ行って取材してきてくれないか?」と頼むことにした。すると、彼女は「嬉しい、もう一度アメリカへ行ける。ホームステイした家族と会える」ということで、私の申し出を快諾してくれた。

 彼女は、100以上の質問(取材項目)と私のカメラを持ってアメリカへ向かった。彼女がアメリカにいる間中、ずっと無事だろうかと案ずることになった。ほどなくして、彼女は取材を終えて、無事帰国してくれた。

 そんな中で、一番の収穫は、アメリカの『イヤーブック(日本で言う卒業アルバム)』の編集部からカメラのネガをもらってきたことだ。これは、編集部の写真担当の生徒10名あまりが一年間かかって写した写真のネガだから、とても貴重なものだった。 

 個人が一年間アメリカへ留学したからと言って、写せる量と種類ではない。一級の貴重品だ。ナイターのフットボールや野球の試合などもあるのだ。インタビューの録音テープもある。

膨大な英語資料をどうするか
 今と違って、翻訳ソフトもない時代だ。膨大な英語の資料を訳さなければ原稿など書けない。そこで、わら半紙にハガキ大の英文を張り付け、1枚200円で訳してもらう作戦に出た。

 日本人が必死になっても分からない部分がある。それは、アメリカ独特の行事などだ。例えば、「ホームカミングウイーク」など何のことだろうと思うかも知れない。

 そんなときは、当時、福井県にただ一人の外人英語講師が毎週木曜日の午後には教育研究所におられるということで尋ねていって質問させていただいた。幸いその時期は定時制勤務だったので、上司の許可を得て出かけることができた。

 原稿の校正は、1年先輩のY先生に我が家で泊まっていただいて、ウイスキーを飲んでいただきながら作業をお願いした。あるときなど、食事の後、蛍を捕ったりして遊んだ後、ウイスキーを飲んでいたら、その日は眠くなって作業なしということもあった。

 こうして1年がかりで要約原稿ができあがった。印刷は行きつけの印刷屋さんだ。予算もないのに、印刷して下さった。あるときに払えば良いという寛大なものだった。そして、3,000冊の本ができあがった。

どうして注文を取るか
 玄関に積まれた3、000冊の『アメリカの高校生~イリノイ州セントラリア高校の全て~』を前に呆然とした。これをどうして売りさばくか。地元や福井の本屋へ置いてもらったところで知れているだろう。

 全国の書店へ送るルートは個人にはない。ダイレクトメールで全国の5,000の高校の英語科と図書館へ送ることにした。と言っても、A2版の宣伝のチラシを郵送するのだ。

 10,000通の手紙の切手代が70円×10,000通=700,000円だ。三色刷のチラシ印刷代も馬鹿にはならない。それに、10,000通の宛名を家庭で書けるずがない。

 チラシを封筒に入れるためには相当折り曲げなければならず、それに、推薦状や振替用紙なども入れなければならない。高校生数人を弁当付きのアルバイトで雇い、必死に宛名を書いてもらった。郵便番号がない時代なので大変だった。

  結局、1、000,000円ほど、ダイレクトメールのために費やすことになった。お金が羽を生やして飛んでいく。これで本が売れなければ、大変な赤字だ。果たして注文は来るだろうか。  (その1 終わり)

 結局、1、000,000円ほど、ダイレクトメールのために費やすことになった。お金が羽を生やして飛んでいく。これで本が売れなければ、大変な赤字だ。果たして注文は来るだろうか。  (その1 終わり)

自費出版した『アメリカの高校生』(表紙に使った写真は全て卒業アルバム制作スタッフが撮影したもの)

 
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Posted in 教育