40年前の恩師の言葉 2005-12-15
私の恩師(校長だったN氏)が、今から40年前に私たちに語った言葉がいくつかある。その中に、『教師の職業病』というのがあった。教師がかかる病気とは、常に白墨(チョーク)を使っているので、その粉をすって肺でも悪くすることかと当時は想像したが、全く違っていた。
教師は、通常、子供の前に立って授業を進めることが多い。また、保護者からはどんな新米でも「先生、先生」と呼ばれて、自分に力がなくても形式的には一定の身分が保証されている。
周りの者が苦々しく思っても、子供を人質に取られているだけに思うことも自由に話すことが出来ない。そこで保護者は、当たらず触らずにして一定の距離感を保っている。
こうした状況に気が付かないまま長年教師を務めていると、世間の者まで生徒に見えてしまうのか、その対応の仕方が子供に対しているように、自分が立場的に上にいるような態度をとることが多い。
そして、退職後も「先生、先生」と呼ばれて、すっかり世間の常識から外れてきてもそれに気が付かず裸の王様のごとく振る舞ってしまう。
こうした状況を我が恩師N氏は、『教師の職業病』と称して、私たちに気を付けるよう諭したのである。
この病気にかかった先輩も少なからず世間にはいる。そこで私は、時々このことを思い出して部課長のみなさんに話すことがある。
「よきリーダーになれ。かつまた、よき兵隊になれ」と。役職で動く部分と役職を離れて一市民として動く部分があれば簡単にはこうした病気にはかかるまい。
(今も心すべきことである。)