繰り返しが許される
よほどでない限り、同じ小説を何度も読んだり、同じ映像を何度も見たり、同じ講演を何度も聞いたり、同じ落語を何度も聞くことになったら、耐えられないだろう。飽きてしまってうんざりするだろう。
ところがどうしたことか歌に関しては、同じ歌を毎日聞いていても耐えられるどころか、聞きたくなることもある。これは歌が単なるメッセージだけを伝えるのではなく、メロディーの美しさ、歌唱の素晴らしさなどいろんな要素があるからではなかろうか。
私はこれを歌の力と呼んでいる。想いを歌で伝えることは可能であり、聞いた者がその歌を覚えようとしたり、自ら歌うことだってあるのだ。素晴らしい講演を聴いたからと言って、自分でそのように話してみたくは成らないだろう。しかし、歌は違う。
逆に言えば、歌で想いを伝えることはできるのだ。何度も繰り返し聞かれることがあるのだ。私のような凡人の作った民謡で毎年盆踊りをしてもそれが通ってしまうのだ。飽きられはしないのだから不思議だ。
戦時中の軍歌なども、そのような効果があって戦意高揚に役立ったのであろう。平和のために、人が平和でいられるように、何度聞いても心を打たれる歌を今の時代こそ作ってほしいものだ。